理事長 金 修よりご挨拶を申し上げます

デジタル赤字と人材育成
第8回総会も終え、2025年度の活動がスタートしました。
トランプ政権の関税施策が世界の経済活動に大きな影響を与えています。MAGA(Make America Great Again)と言われるトランプ政権の主張は、約30年から40年前の1980年から90年代にかけて起きた、日米自動車産業と半導体産業の摩擦を想起させます。この摩擦の結果は、自動車産業と半導体産業をトレードオフしたように思えます。その結果、日本の自動車産業は米国への輸出拡大や積極的な工場建設などを、一方、メモリーなどの半導体産業は一気に衰退しました。米国はITサービス産業が大きく強くなるものの、製鉄や自動車産業などの製造業が弱体化し、昨今のMAGA主張に至っているのではないでしょうか。
近年、日本のデジタル赤字が拡大傾向にあり、話題になる機会が増えているように思います。これは日本の企業や個人がGAFAMなどの米国企業が提供するITサービスを多く利用しているためで、2024年には6.7兆円を突破したと見られています。今後も生成AIなどの活用により、このデジタル赤字はさらに拡大する可能性が指摘されています。経産省の試算では、2030年にはコンピュータサービスの赤字だけで8兆円に達する可能性もあるとされています。
デジタル赤字が増加するのは、日本のデジタル化が進んでいる証の一つであるという見解もあるようですが、日本のデジタル化が益々外資依存になっていく事でもあります。これらの改善のために、
- 国内デジタル産業の強化
- デジタルサービスの輸出拡大
- 規制緩和と投資促進
などが指摘されていますが、最も重要な事は、これらの事を担う「人材の育成」ではないでしょうか。
デジタル化の進展は、あらゆる産業でIT活用が当たり前になることですが、現状のままでは一方的にデジタル赤字が増加することになってしまいます。デジタル収支をバランスするためには、デジタル投資したものの効果的な回収やその成果物の輸出などで、この事を実現するためにも、やっぱり「人材」です。
人材育成の結果を享受するには、長い時間と成長を見守る忍耐が必要とされます。しかし、そのための奇策はありません。
「人材の見える化の基盤整備を支え、人材マネジメントの運用と人材育成の支援」のため、そのツールやオープンな情報交換の場を提供し、産業界の新たな飛躍に貢献する事が本協会の使命であります。
2025年度の活動がスタートするにあたって、協会から提供できる新たな事も整いつつあります。会員皆様の引き続きの積極的な協会活動へのご参加と、そして多くの方々の協会活動への参加をお待ちしております。
2025年6月吉日
一般社団法人 iCD協会
理事長 金 修